抄録
福島第一原子力発電所事故後の放射性物質(放射性セシウム)に汚染された土壌の生物除染 法として,陸生藍藻イシクラゲ(Nostoc commune)の活用の可能性を検討した。汚染砂でイ シクラゲを屋外栽培したところ,放射性セシウム(134Cs + 137Cs)を吸収・固定するのが観察さ れ,30日後の汚染砂からイシクラゲへの移行係数は1.65であった。福島市内および南相馬市内19 か所の天然土壌上でイシクラゲを約30日間栽培したところ,土壌からイシクラゲへの放射性セ シウムの移行係数は0.19~5.35であり,また栽培後のイシクラゲの放射能濃度と汚染土壌の放射能濃度との間には正の相関関係(相関係数:134Cs;0.882,137Cs;0.880)が認められた。これら の結果より,イシクラゲが生物除染に利用できる可能性が示唆された。