抄録
本研究は,磁気ディスク基板の仕上げ研磨や半導体基板のCMPに代表されるような,原子レベルの材料除去を伴う砥粒加工において重要となる,摩擦・摩耗現象を明らかにすることを目的としている.ここでは,完全剛体ダイヤモンドの極微小砥粒に3次元ばねを連結して把持剛性を考慮した分子動力学モデルにより,銅単結晶の完全表面を加工する場合について,上すべりから原子除去に至る遷移領域における現象を解析した.押込み深さを変化させた一連のシミュレーションの結果,上すべり過程では,工作物表面の原子配列の周期に対応した2次元ないし1次元のスティックスリップ現象が生じるのに対し,垂直荷重の増加により原子除去を伴うようになると,2次元スティックスリップ現象の周期および振幅がばらつくことなど,原子スケール特有の現象が生じることを明らかにした.