抄録
本研究では,SKH59製の微粒子を用いてピーニングを施したNi-Ti形状記憶合金のNiイオン溶出挙動について検討を加えた.その結果,微粒子ピーニング(FPP)を施したNi-Ti形状記憶合金の場合,表面から溶出するNiイオン量は,未処理材や従来のショットピーニングを施した試験片と比較して低い値を示した.これは,FPPによって合金表面に非晶質組織が形成されたためである.また,FPPによるNiイオン溶出抑制効果は,Niフリー層を形成できる大気酸化処理と同等のレベルにあることが明らかとなった.さらに,FPPを施したNi-Ti形状記憶合金の生体内使用の可能性について検討を加えるため,動電位分極試験および細胞培養試験を行った.その結果,FPPを施すことによって不動態域におけるNi-Ti形状記憶合金の電気化学特性は改善されたものの,耐孔食性や細胞適合性の改善は認められなかった.