抄録
航空機用材料として使用されるステンレス鋼の高効率加工の実現を目指し,切削工具用薄膜としてホウ素含有薄膜のなかでは密着力が高いTiB2をベースとした薄膜をスパッタリング法により形成した.その結果,TiB2+10wt.%Bターゲットを用いてBを過剰とする(TiB2+αとする)ことにより,密着力および微小硬度は上昇した.さらに,TiB2+α薄膜形成時にCを同時にスパッタし,薄膜中の炭素含有量を30at.%以上とすることにより,TiB2+α薄膜と同等以上の密着力を維持した状態で摩擦係数は0.8から0.4程度に低下した.この密着性および潤滑性を改善したC添加TiB2+α薄膜をコーティングした切削工具を用いることにより,析出硬化系ステンレス鋼のドライ切削時の切りくず排出性は改善し,とくに,切削距離1000mにおいてコーティングの効果は顕著となった.さらに,被削材(ステンレス鋼)の表面平滑性は向上したが,工具刃先においてC添加TiB2+α薄膜は剥離した.