抄録
ラッピングテープによる研磨加工は,加工領域に連続的に新品テープを供給しつつ,加圧ローラで押しつけながら,相対運動させる仕上げ加工である.近年,高硬度な被削材に対しては,超砥粒を結合材によってテクスチャ構造に成形した,比較的高価なラッピングテープが用いられているが,使用後に廃棄されており,加工コストの増加が問題となってきた.そこで本研究では,超音波キャビテーションによって,加工後に目づまりしたラッピングテープの凝着物を除去し,加工能力を再生する方法を提案する.まず,超音波洗浄機のキャビテーションによって凝着した切りくずを除去できることを確認した.次に,研磨プロセス中での凝着物の除去を実現するために,研磨装置内に組み込み可能なサイズの超音波振動ホーンのスリット内を,研磨プロセスと同じテープ送り速度で通過させて,凝着物を除去した.凝着物除去能力を目づまり面積で評価するとともに,研磨特性を被加工面の表面粗さおよび負荷曲線から評価した.その結果,本手法が研磨プロセス中に,使用済みテープの研磨能力を再生できることを確認できた.テープ送り速度を遅くしたり,除去工程を繰り返すことで目づまり面積は減少し,2回の除去工程で目づまり面積を半減できた.