2020 年 64 巻 1 号 p. 32-38
電子デバイス向け単結晶基板の形状創成工程として,軟質金属製定盤とダイヤモンド砥粒を用いたラップ技術が広く用いられている.一方,このラップ工程で形成される加工変質層深さは,プロセス全体の加工時間およびコストの増加に影響を与えている.本研究は,第一に従来の金属製定盤をポリウレタン樹脂製のパッド(樹脂パッド)に代替し,加工変質層の低減を図る.更に砥粒の配置制御技術である電界砥粒制御技術を導入することで研磨効率の向上を実現する.これらより,低加工ダメ-ジと高効率を両立する新たな機械研磨技術について提案する.サファイアをワ-クとした基礎研磨実験により,樹脂パッドを用いた加工では従来のラップ技術と比して,形成される加工変質層深さを0.16倍程度に低減可能であることを明らかにした.また,電界砥粒制御技術を前述の加工法に導入することで,定盤径φ910㎜の大型装置において,その加工品位は維持し,加工レ-トは従来ラップ技術と比して1.50倍となることを得たので報告する.