2020 年 64 巻 8 号 p. 421-427
本研究では,チタン合金に対して,雰囲気制御高周波誘導加熱微粒子ピ-ニング(Atmospheric-controlled induction heating fine particle peening:AIH-FPP)処理を施し,投射粒子に含有されるアルミニウムを被処理面に移着,基材に拡散させることにより,Ti-Al金属間化合物層を創成することを試みた.高速度工具鋼粒子と純アルミニウム粒子に対してメカニカルミリングを施すことにより,高速度工具鋼の表面にアルミニウムが薄く被覆された粒子を作製し,AIH-FPP処理に用いた.その結果,高硬度の高速度工具鋼を主体とした粒子の投射により被処理面で折り畳み変形が生じ,移着したアルミニウムが基材に埋入されるため,厚さ数十μmのアルミニウム移着層が形成された.また,粒子投射後に高温で加熱保持を行うことにより,高硬度を有するTi-Al金属間化合物層が形成されることが明らかになった.これは,粒子投射の際に被処理面に移着したAlが基材に拡散するためである.本研究で得られた結果は,提案した処理により投射粒子成分のアルミニウムを移着,拡散させることで,チタン合金の表面にTi-Al金属間化合物層を形成できることを示すものである.