砥粒加工学会誌
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酸素含有量制御によるTiB2系薄膜の高硬度化と工具用コーティング材への応用
神崎 昌郎大和 航
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2021 年 65 巻 1 号 p. 30-35

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抄録

Ti合金等の難削材の高効率加工に適用可能なコ-テッド工具の開発を念頭に,耐熱性に優れるTiB2系薄膜の高硬度化を目指した.スパッタリング法によるTiB2系薄膜形成時にBを過剰に含有したタ-ゲットを用い,薄膜中のB/Ti比を2以上にした.これにより成膜時のTiの酸化が抑制され,TiB2系薄膜中の酸素含有量は低下した.それに伴い微小硬度が上昇するとともに,密着性も改善した.この結果をふまえ,TiB2系薄膜中の酸素含有量を制御することを目的に,スパッタ成膜前の真空度を高めた実験を行った.その結果,TiB2系薄膜中の酸素含有量を3at.%まで低減させることができ,35GPaを超える微小硬度が得られた.この高硬度かつ高密着性を有するTiB2系薄膜を切削工具用コ-ティング材として用いることを目的としてCを添加し,摩擦摩耗特性を改善した.Ti合金切削時にCを添加したTiB2系薄膜をコ-テイングした工具を用いることにより,ドライ加工においても切削油を供給した場合と同様の切りくず排出性を実現できた.また,被削材(Ti合金)の表面平滑性も向上し,加工初期の切削抵抗を低減させることが可能となった.

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© 2021 社団法人 砥粒加工学会
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