砥粒加工学会誌
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熱可塑性CFRPを対象としたローソク型ドリルによる穴加工
第1報:凸型切れ刃の切削方向と繊維配向が切削特性に及ぼす影響
佐々 遼介岡田 将人植松 英之金田 直人
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2022 年 66 巻 8 号 p. 457-463

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抄録

ドリルコ-ナ部に凸型切れ刃(以後,凸刃)を有するロ-ソク型ドリル(以後,凸刃ドリル)および,その凸刃を除去したドリル(以後,従来ドリル)を炭素繊維の配向が一方向の熱可塑性CFRPの穴加工に適用し,切削抵抗,加工穴品質,切削温度の観点から,連続的に変化する凸刃の切削方向と繊維配向とのなす角が切削特性に及ぼす影響を検討した.凸刃ドリルのスラスト力は,いずれのドリル回転角においても従来ドリルに比べて高くなる傾向が認められた.凸刃先端は軸方向に対して薄肉の鋭利形状を呈しており,主切れ刃コ-ナ部より先行して切削に関与するため,同部により主切れ刃とは独立した切りくずが排出された.凸刃ドリルによって創成された加工穴出入口および内面は,従来ドリルと比較してアンカットファイバ,バリの少ない良好な加工穴品質であった.切削温度は,両ドリルとも加工穴入口から出口にかけて上昇する傾向が示唆される結果を得た.また,ドリルによって加工穴周辺に生じる温度分布履歴に違いが認められた.被削材貫通時において,凸刃先端が加工穴の出口輪郭部の材料を先行して除去するため,加工穴出口の一部において温度上昇を抑制する効果が示唆された.

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© 2022 社団法人 砥粒加工学会
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