2020 年 5 巻 2 号 p. 151-157
本研究は野球選手の発育に伴う慣性値の変化を暦年齢ならびに相対発育の2つの発育指標から明らかにし,肘障害予防の一端を担うことを目的とした.対象は小学生から大学生までの野球選手133名とした.DXA装置を用いて全身スキャンをし,Ganleyの慣性モーメントの算出法に準じて,前腕・手部慣性値を算出した.また,肩甲帯部除脂肪量に対する前腕・手部慣性値を示す慣性値比,野球ボール保持想定での慣性値比を求めた.さらにアロメトリー法を用いて身長に基づく相対発育の観点から慣性値比および野球ボール保持想定での慣性値比の変位点を求めた.慣性値比は12歳頃,または身長約150cmでピークとなり,この時期には肘障害のリスクが高まることが示唆された.