育種学研究
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精白米中にコシヒカリの約3倍の食物繊維を含有する水稲新品種「新福1号」の育成
小林 麻子西村 実中岡 史裕冨田 桂町田 芳恵両角 悠作森田 竜平渡辺 脩斗林 猛清水 豊弘佐藤 有一佐藤 信仁
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2023 年 25 巻 1 号 p. 24-30

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抄録

食物繊維は多くの生理機能を有する成分であるが,近年の日本人の摂取量は目標量に達していない.「コシヒカリ」の白穂突然変異系統「WPK」に0.1 M EMS(エチルメタンスルフォネート)処理を行った固定型突然変異系統群の中から,玄米外観が粉質で,精白米中の食物繊維含有率が高い「WFE5」を選抜した.「WFE5」と「コシヒカリ」の交雑F3に「コシヒカリ」を戻し交配し,「コシヒカリ」の遺伝的背景で食物繊維含有率が高い準同質遺伝子系統として「コシヒカリNIL[WFE5]」を育成した.「コシヒカリNIL[WFE5]」について,複数年にわたり食物繊維含有率,栽培特性および食味特性を評価した.その結果,「コシヒカリNIL[WFE5]」は,精白米中に「コシヒカリ」の約3倍の食物繊維を含有し,その食味は「日本晴」並みであると判断した.精白米に食物繊維を多く含む品種は,日本人の健康増進につながると考え,福井県農業試験場,新潟大学および農業・食品産業技術総合研究機構の三者が共同で「新福1号」として品種登録出願を行った.「新福1号」の食物繊維含有率は,5か年の平均値で,玄米および精白米でそれぞれ5.1%および2.6%であった.食物繊維含有率には年次変動があり,千粒重が大きいほど,また玄米タンパク質含有率または精白米アミロース含有率が低いほど食物繊維含有率が高い傾向が認められた.「新福1号」の栽培特性は「コシヒカリ」とほぼ同等であるが,収量性は「コシヒカリ」の68%と低く,玄米は白濁して千粒重は「コシヒカリ」より15.5%程度小さく,倒伏抵抗性は「コシヒカリ」よりやや強いが,穂発芽は「コシヒカリ」よりややし易かった.

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