抄録
酒米品種「山田錦」と食用米品種「レイホウ」の正逆組合せ交雑に由来するF2集団の分散およびF2集団に選抜を加えた選抜反応から,心白発現の遺伝率を推定した.F1個体の発現率およびF2集団の頻度分布から,心白発現には,発現を抑制する方向に優性で,2つ以上の遺伝子が関与していると推定された.F2集団の分散から推定した心白発現率の広義の遺伝率は,0.825~0.860とかなり高かった.F2-F3世代間の選抜反応から推定した心白発現率の遺伝率は全体としては0.309~0.447であったが,上位方向で0.588~0.897と高く,下位方向で−0.037~−0.093と低かった.このことから心白発現率の高い方向への選抜はかなり高い選抜効果があり,高心白米育種において初期世代での選抜が可能と考えられる.しかし,F2集団において,「山田錦」と同程度の心白発現率を有する個体の出現頻度は非常に低いので,発現率の高い個体を初期世代で選抜するためには,選抜個体集団を大きくするか,戻し交配などにより心白発現を促進する遺伝子の集積を図る必要があると考えられる.一方,「レイホウ」の有する半矮性遺伝子(sd-1)は心白発現への影響が認められず,酒米育種においても短稈化に寄与する有用遺伝子であると考えられる.