育種学研究
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原著論文
イネの浮遊葯培養におけるカルス増殖様式の解析
岡本 吉弘木下 厚石村 櫻佐竹 徹夫
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2003 年 5 巻 4 号 p. 155-160

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抄録

イネ浮遊葯培養の優点はカルスを多量に誘導できることであるが,カルスの発生と増加の実態は明らかでない.本研究では液体培地上で誘導されたカルスには,花粉起源のカルスとそれが分割して増えたカルスの2種類があることを示し,それらの時期別の発生数を調べた.水稲品種「キタアケ」の葯を液体培地に置床し,7日ごとに実体顕微鏡の下でカルス数を数えた後,全カルスを液体培地から除去してさらに培養を続けた.このようにして計測されたカルスを,それぞれの計測日の前7日間に形成された花粉起源のカルスとみなした.花粉起源のカルスは培養開始の2週間目に発生し始め,35日目まで毎週連続的に発生した.一方,液体培地にカルス1個を入れて単独培養し,7日目ごとにカルスの増加数を調べたところ,1週間後には1.6倍,2週間後には2.8倍,3週間後には4.8倍に増加した.花粉起源カルスの時期別発生数と分割起源カルスの経時的増加率から,35日目の全カルス数中に占める分割起源カルスの割合を推定すると46.7%であった.浮遊葯培養法を育種技術として利用してゆくためには,分割起源カルスが元のカルスと遺伝的に同じかどうかを確認することが重要である.

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© 2003 日本育種学会
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