育種学研究
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原著
マイクロサテライトDNA多型および農業形質変異の分析による中国新疆コムギ地方品種の特質解明
叢 花坂 智広許 東河岩田 洋佳菊池 文雄藤巻 宏
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2006 年 8 巻 4 号 p. 161-169

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抄録
中国・新疆ウイグル自治区(新疆)の普通系コムギ地方品種の多様性と分化の様相を明らかにする目的で,全ゲノムに分布するマイクロサテライトDNA(SSR)多型および数種の形質変異の解析を行った.2004,2005年の両年にわたり,新疆コムギ地方品種75,新疆改良品種3,近隣諸国を含む外国品種61の139品種を供試して,42種類のプライマーセットを用いてSSRの多型分析を行い,電気泳動ザイモグラムの一致度行列をベースにして主座標分析を行った.その結果,比較的寄与度の高い主座標値の分布について,新疆品種と外国品種との間には明瞭な差異が認められ,新疆コムギ地方品種が外国のコムギ品種とは異なる遺伝的特徴を持つことが分かった.日本などのコムギ品種よりは,近隣国のコムギ品種と遺伝的に近い可能性が考えられる.また,新疆地方品種の春播型コムギと秋播型コムギの間にもSSR多型に関する分化がみられ,両者は遺伝的に異なる祖先に由来する可能性が考えられる.さらに,2003年と2004年の両年にわたり新疆ウイグル自治区ウルムチ市において,新疆コムギ地方品種71点を供試して,到穂日数,稈長,穂長,一穂着粒数,一穂小穂数,千粒重の変異を調べ,春播型コムギと秋播型コムギの間の品種分化の様相を明らかにした.また,農業形質の変異を総合的にとらえるために主成分分析を行った.その結果,春播型コムギと秋播型コムギの地方品種の間で,草型,穂相,粒の大きさなどに関して,表現形質の分化が生じていることが分かった.これらの結果から,新疆コムギ地方品種,とくに春播型コムギと秋播型コムギの間には,SSR多型に関しても農業形質に関しても,はっきりと遺伝的ならびに表現型に分化が生じていることが明らかとなった.
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© 2006 日本育種学会
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