育種学雑誌
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フキ葉肉プロトプラストからの植物体再生
矢部 和則西尾 剛高柳 謙治
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1986 年 36 巻 2 号 p. 131-137

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抄録

フキは雌雄異株植物であり,栽培株には雌株しかみられたいため,繁殖に。は地下茎を利用している.さらに,栽培種は3倍体(2n=87,X=29)で不稔性のため交雑育種が極めて困難である.そこで,フキの葉肉プロトプラストの単離と培養を試み,育種への利用の可能性を検討した. 供試品種“愛知早生ブキ"の15~20cmに伸長した地下茎を採取し,70%エチルアルコールに60秒間,活性塩素濃度0.5%のアンチホルミンに10分間浸漬して表面殺菌後,顕微鏡下で葉原基を含む0.5~1.1mmの大きさの茎頂を摘出し培地に置床した.培地は,MS培地にBAを2mg/l加えたものを用い,茎葉分化後BAを1mg/l含むMS培地に分割移植し無菌植物を得た.プロトプラストの単離に供試した葉は,この無菌植物から採取した.0.1%ペクトリアーゼY 23+0.5%セルラーゼオノズカRS+0.5%ドリセラーゼ+0,5Mマンニトールの酵素液に,CPW塩を含む0.5Mマンニトール液中で細断した葉を入れ,27℃,80回/分で120分間振とうすることにより活性の高いプロトプラストが得られた.プロトプラストの培養は,培養温度25℃,培養密度1×105個/mlの条件で行い,基本培地の種類,濃度及びホルモン濃度について検討した.その結果,基本培地としては無機塩,ビタミン類とも希釈したMS培地が適することが明らかになった.また,MS培地の無機塩の中で硝酸アンモニウム濃度とその他の無機塩濃度について検討した結果,硝酸アンモニウムを200mg/lとしたMS無機塩を1/4濃度に希釈した培地で最も分裂が進むことが認められた.更に,無機塩をMS培地の1/4濃度,ビタミン類を同じく1/2濃度に希釈Lた培地でホルモンの濃度を検討した結果,オーキシンにNAA,サイトカイニンにはBAを用い,それぞれ2mgμ及び0.2~0.5mgμの濃度としたものがプロトプラストの分裂に最も適することが明らかとなった.

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