育種学雑誌
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直接培養法によるイネ単離花粉からの植物体再生
小川 泰一福岡 浩之大川 安信
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1995 年 45 巻 3 号 p. 301-307

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抄録
インド型イネの単離未熟花粉から緑色植物体を再生させる直接花粉培養法を確立した.本方法の場合,従来行われてきた花粉単離前の菊培養を必要としない.材料は主としてインド型品種IR24を用いた.未熟単離花粉の細胞分裂を誘導するには,花粉単離前に穂を10℃暗黒下で保存する「低温処理」か単離直後糖飢餓条件で短期間培養する「糖飢餓処理」のいずれかの処理を施すことが必須であった.2つの処理を比較すると低温処理の効果の方が大きかった(Table1).さらに,この2つの処理を組み合わせた場合,分裂に必要とされる糖飢餓処理の期間は,低温処理の期間が長くなるほど短くなり,両者の分裂誘導に対する効果の間には相補的な関係があることが明らかになった.21日間の低温処理と1日間の糖飢餓処理の組合せか28日間の低温処理のみの条件が,単離未熟花粉の細胞分裂誘導には最適であった(Table1).オーキシン2,4-Dの添加は細胞分裂の誘導には必須ではなかったが,コロニーの生育には必須であり,結果として,2,4-Dの存在下で得られたカルスからのみ植物体が再生した(Table4).さらに,分裂誘導培地中の窒素源組成の影響を検討したところ,添加する還元型窒素源がコロニー形成や植物体再生の頻度に大きな影響を及ぼすことがわかった(Table2,3).還元型窒素源をグルタミンにしたとき,コロニー形成頻度は0.2%と最も高くなり,従来の硫酸アンモニウムを還元型窒素源とした場合の2.0倍に達した.一方,植物体再生の頻度は,アラニンを還元型窒素源として含む分裂誘導培地で得られたカルスにおいて最も高かった.加えて,分裂誘導条件が21日間の低温処理のみの時,アラニンを含む培地で得られたカルスでは,再生個体中の緑色個体の割合が明らかに高かった.
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