2020 年 11 巻 1 号 p. 17-21
近年,腸内細菌叢とその代謝産物が,生体の恒常性維持に関連し,細菌叢の破綻が種々疾患の発症・進展に関与していることが明らかとなっている。近年,腸内細菌叢の代謝産物としてD-アミノ酸が注目されている。これまでの分析技術では分離・同定し得なかったL-およびD-アミノ酸を,高精度かつ網羅的に定量評価することが可能となった。この結果,L体およびD体は,体内動態,生体への機能を異にすることが明らかとなっている。一方で,急性腎障害における腸内細菌叢およびD-アミノ酸の意義は明らかではない。そこで我々は,急性腎臓病において,腸内細菌叢とD-アミノ酸がその病態に関与していると仮説を立て検討を行った。その結果,D-セリンが腎保護作用をもち,かつその血中濃度が腎機能を反映することを見出した。D-セリンが新規治療およびバイオマーカーとなる可能性が示された。今後検討を重ねることによって,臨床応用を目指したいと考えている。