2022 年 13 巻 1 号 p. 11-15
持続的腎代替療法において,回路内凝血トラブルを迅速に検知することは非常に重要な課題である。われわれは,回路内凝血トラブルに対する新しいモニタリング手法の開発のために,その基礎実験として,短時間で回路内凝血を模擬できる凝血加速モデルの構築を試みた。クエン酸の投与で動脈回路内を抗凝固しながらダイアライザーで透析・除去することで,静脈回路内の濃度を低下させて静脈チャンバー内で凝血させた。そのために,シングル・コンパートメント・モデルに基づいて推定した動・静脈回路内のクエン酸濃度を用いて,実験的に静脈側回路内の牛血液中のクエン酸濃度を変化させ,回路内凝血の有無や凝血時間を調べた。動脈回路側のクエン酸濃度を10.0〜12.0mMに調整することで動脈側回路の抗凝固を維持しつつ,透析によって静脈側クエン酸濃度を5.1mMに低下させ,静脈チャンバー内で凝血時間129分を達成した。