2022 年 13 巻 1 号 p. 16-21
実験科学,理論科学,計算科学に次いで,「第四の科学」とも呼ばれるデータサイエンスが隆盛している。医療分野における今回の人工知能(AI)ブームでは計算機の飛躍的な性能向上に加え,電子カルテをベースとした多変量電子データの蓄積が原動力となった。2019年にはGoogle傘下のDeepMind社がニューラルネットワークを応用して急性腎障害の発症予測システムを発表して話題となった。急性血液浄化療法を含む集中治療分野は,比較的豊富なデジタルデータの採取が可能であることから,AIによる診療サポートが開発されやすい土壌がある。しかし,AIの医療分野での実用化には課題もある。医療職の技術・判断力の低下やプライバシー保護,自動算出された結果の解釈可能性の問題などが一例である。今後AIの医療応用の流れが変わることは考えにくく,真のベネフィットにつながるようなヒトとAIの共存方法を模索すべきである。