アフェレシス療法においても2007年にAmerican Society for Apheresis(ASFA)よりガイドラインが発刊され,その後改訂が繰り返され2019年に最新版が発刊されている。米国では遠心分離法を用いたアフェレシスが中心であり,わが国では膜分離法が中心である。そのためASFAのガイドラインをわが国に持ち込むことは多くの問題点が生じる。2017年より日本版アフェレシス治療ガイドラインの作成が開始され,2021年夏に「日本アフェレシス学会 診療ガイドライン2021」の発刊に至った。本ガイドラインでは,救急疾患,血液疾患,膠原病・リウマチ性疾患,呼吸器疾患,循環器疾患,消化器疾患,神経疾患,腎臓疾患,皮膚疾患の9領域,86疾患を網羅した。また膜技術を用いた新しい治療法として,plasma filtration with dialysis(PDF)を取り上げた。
【はじめに】血液浄化装置で使用される静脈側エアートラップ(V)チャンバーは,血液浄化施行時の凝固の要因となる。今回,異なる形状のVチャンバーを用いて滞留時間を基礎実験にて評価した。【方法】コンソールはPrismaflex とACH-Σを使用した。模擬血液用原液1mLをVチャンバーに注入してから色素が消失するまでの時間を3回ずつ測定し,その平均値を比較した。また目視にてVチャンバー内での流体を評価した。【結果】Vチャンバー内での流体滞留時間はPrismaflex群が有意に短かった(Prismaflex群:17.5±0.7秒 vs ACH-Σ群:51.2±0.7秒,p<0.05)。また,流体の目視評価において,PrismaflexではVチャンバー内で旋回流として均一に流れ入るのに対し,ACH-Σでは底部のみが拍動性に不均一に流れ,液面上層部において滞留が確認できた。【結語】Vチャンバーの構造の違いがVチャンバー内での滞留に影響を与える可能性が示唆された。
透析患者の高齢化やCOVID-19感染症対策は急務である。高齢者腹膜透析の最大の問題は介護者の負担と見守り体制の不備である。われわれはinformation and communication technology(ICT)を活用した連携体を構成している。この連携体は,遠隔モニタリングクラウドネットワークで,大学腹膜透析本部と五つ以上からなる訪問看護ステーション(訪看ST)を結んだものである。この見守り連携体を“サイバービレッジ”(Cybervillage:CV)と命名した。医師6名が患者治療状況を週1回特定のチェックシートに記入し,このチェックシートをクラウドを通してCV全体で共有する。チェックシートを基に,訪問STは訪問時にわれわれが定めた対応アルゴリズムに従い,処置,検査(出口部感染の培養など)や看護指導を行っている。さらに訪問状況報告シートをCV全体で共有している。上記情報は編集し,実践的な教育教材となる。以上のようなCVの創出・実践を通して高齢者在宅医療の問題点や解決策を提示し,今後の発展を目指す高齢者在宅医療モデルケースを提案したい。
High dose-methotrexate(HD-MTX)投与後,排泄遅延を認めた際には毒性の軽減を期待して血液透析(hemodialysis:HD)や活性炭吸着膜を用いた直接血液還流による血液吸着療法(direct hemoperfusion:DHP)などの血液浄化療法が行われる。時間を延長して同一のDHP浄化器を使用した報告はなくクリアランスを検討した報告も少ない。われわれは,クリアランスと有害事象を確認しつつ最長24時間まで血液吸着を実施し,合併症をきたすことなく回復したMTX中毒の急性リンパ性白血病の小児症例を経験した。血液流量(Qb)60mL/minでDHPを行い,16時間継続した時点で除去効率,クリアランスがそれぞれ0.85,48.9mL/minと維持され,良好な除去率が得られた。成人に比して小さなQbで十分な血液浄化を可能な小児例では長時間DHPが実施できる可能性があるため,症例の積み重ねや実験での確認が望まれる。