2023 年 14 巻 1 号 p. 7-11
集中治療室において間欠的透析を行う際は,個人用水処理装置および個人用透析装置が必要となる。当院では,過去に治療準備時の配管誤接続が原因で個人用透析装置より水が噴出し,洗浄用の塩素系薬剤と酸性薬剤の混触によって塩素ガスが発生する事例が生じた。原因は,ヒューマンエラーがきっかけであったが,個人用透析装置へ個人用水処理装置の排水が逆流するという想定外の機序で生じたものであった。その後,塩素ガスが発生しないための対策および,塩素ガスが発生した際に被害を最小限にとどめるための対策を講じた。塩素ガス発生事例を経験し,長期間継続してきた日常業務であっても,その陰には大きな事故につながる要因が複数潜んでいることを痛感した。業務の運用を決定,見直しする際は,あらゆる可能性を考慮し,二重三重の安全対策を実施する必要がある。