2011 年 2 巻 1 号 p. 122-126
症例は79歳の男性。直腸癌に対して低位前方切除術が行われた。術後に縫合不全をきたし敗血症および急性腎不全となったため,全身管理を目的にICUに入室した。敗血症による高サイトカイン血症および急性腎不全に対してpolymethyl methacrylate(PMMA)膜を使用した持続血液濾過透析(Continuous hemodiafiltration:CHDF)を開始した。開始直後から血圧が低下し,補液や昇圧剤の増量を行ったが血圧の回復は一時的であった。薬剤アレルギーを疑って抗凝固剤を変更したが,血圧は安定せずCHDFは断念した。翌日に十分な補液と輸血を行い,PMMA-CHDFを再度開始した。しかし末梢血管抵抗の急激な低下と伴に血圧は低下した。開始直後の血液検査では好酸球やIgEの上昇は認めなかったが,単球の上昇が認められた。PMMA膜の使用は断念しpolysulfone(PS)膜によるCHDFを行ったところ,血圧低下はなく順調に経過した。PMMA膜は生体適合性に優れた安全性が高い膜と考えられているが,本症例ではPMMA膜が原因と考えられる血圧低下をきたし,その機序には単球が関与した可能性が示唆される。