日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
2 巻, 1 号
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総説
  • 岡本 健
    2011 年 2 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    世界第1の長寿国となった日本の今後の医療,福祉への対応については世界から注目されるところである。少子高齢化に伴い今後医療・福祉に対する政策はいかにあるべきか。まず医療においては総合診療(プライマリーケア)が必要となる。福祉に関しては高齢者がその一生を本当に幸福に送るため,高度先進技術を用いた福祉機器の開発,その利用が考えられる。高齢者が幸福に一生を過ごすためには感覚器が重要な役割を果たしていることは確かである。高齢者福祉に対してはこれらの点に関しても十分考慮されることが望まれる。

  • 服部 元史
    2011 年 2 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,小児急性血液浄化療法の歩みと現況について概説した。近年の血液浄化関連機器の開発により,現在は,体重が3kg以上であれば,技術的にはほぼ問題なく体外循環血液浄化療法が実施できるようになり,さまざまな小児急性疾患に対して各種血液浄化療法が積極的に導入されるようになってきた。今後は,救命率の向上につながるより質の高い急性血液浄化療法を目指す必要があり,各種病態の一層の解明と,各病態に応じた適正な血液浄化条件・方法の確立が望まれる。また,全国の医療施設において,誰でも,容易に,そして安全でかつ質の高い小児急性血液浄化療法が実施できるよう,実施マニュアルの作成(標準化)と教育・啓蒙・普及活動が必要と考える。

  • 鈴木 洋通
    2011 年 2 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    腎代替療法は様々な医療の現場で行われている。そのなかで持続的代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)は救急医療の現場でしばしば行われている。しかし,実際にどのような疾患にどう用いるかについては十分な成績が提出されているとは言い難い。またCRRTは人的にも医療経済的にも一般に行うことは容易ではない。ではどの様な病態にどうCRRTを用いればよいかについて経験と現在まで報告されたいくつかのメタ解析を中心に検討を行った。そこから判明したことは心原性ショックと敗血性ショックに関してはCRRTは有効である可能性が示唆された。すなわち血圧が低いにも関わらず腎代替療法が必要とされる病態ではCRRTを行い救命につながると考えられた。

  • 大平 整爾
    2011 年 2 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    急性期医療には,慢性期医療とは異なった種々の特徴が伴っている。急性期医療において,医療者はあらゆる面で速やかな決断を求められ,多くの場合限られた装備と人材で即時的医療行為に当たらなければならない。このため,現代医療の根幹である「説明と同意」という基本的な過程が,緊急事態では必ずしも望ましい形式で行いがたい。この点は“emergency rule”として容認され得るのではあるが,これに甘えずできうる限り時を置かずに患者側に事態を説明し,施行しようとする医療の内容に触れることが肝要である。殊に先進的な医療が選択される場合には,これに意を尽くす必要が出てくる。患者のQOLを患者側と熟考したうえで,治療の非開始や一旦開始した治療の中止(断念)を模索しなければならない事態も生ずる。ここでは,「生命の捉え方」が医療者に問われる。

  • 大道 久
    2011 年 2 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    1999年に発生した患者取り違え事故以降,わが国では様々な医療安全の確立に向けた取り組みがなされ,一定の成果を得たといえる。日本医療機能評価機構は医療の質向上と安全の確立のために,「病院機能評価」や「医療事故等情報収集事業」を行ってきたが,ここではそれらの取り組みと最近の動向について報告する。同機構には,医療事故報告システムとして,医療事故情報等収集事業,認定病院医療安全審査,および認定病院患者安全推進協議会による取り組みがある。ここでは,主として「医療事故情報等収集事業」の最近の動向を具体的に紹介する。2009年1年間の大学病院,および国立病院機構の病院等273施設からの報告件数は1895件で,そのうち特定機能病院が788件を占める。事業発足当初は年間1件の報告もない医療機関が稀でなかったが,近年は一定の件数に落ち着いてきており,報告システムとしての安定性と信頼性を確立しつつある。

  • 巽 博臣, 今泉 均, 升田 好樹, 千原 伸也, 吉田 真一郎, 蕨 玲子, 後藤 京子, 澤田 理加, 中野 皓太, 浅井 康文
    2011 年 2 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    ALI/ARDSの治療としての血液浄化療法のエビデンスは未だ確立されていない。しかし,全身性炎症反応症候群(SIRS)の一分症として生じるALI/ARDSに対し,持続的腎機能代替療法(CRRT)は炎症性メディエーター制御と適切な水分管理の2つの機序により呼吸状態を改善させる可能性がある。ALI/ARDSに対するCRRTの詳細な作用機序の解明とともに,CRRTの有効性を高めるために施行モード(HD/HDF/HF),透析液量,施行時間,膜の材質や膜面積など,さまざまな検討がなされている。また,ALI/ARDS症例におけるエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)の酸素化改善効果も報告されている。一方で,ALI/ARDSの治療は血液浄化療法単独で行われることはなく,ALI/ARDSの病態や予後は原疾患によっても大きく異なる。ALI/ARDSの原因や病態の違いや,人工呼吸器条件や薬物治療など各種治療による影響を十分加味した上で,ALI/ARDSに対する血液浄化療法の有効性を評価する必要がある。

  • 劇症肝不全に対する血液浄化法
    兼坂 茂, 井上 和明
    2011 年 2 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    劇症肝不全に対する人工肝補助療法(ALS)として,われわれは血漿交換(PE)に血液濾過透析(HDF)を組み合わせて施行してきた。PEの保険適応は劇症肝炎に対し10回,急性肝不全に対しては7回を限度とされている。劇症肝炎に対してPE単独では昏睡死する症例があるため,昏睡起因物質とされる中分子量物質の除去を目標にHDFを併用した。大量の置換液(high volume,2~3L/h)と透析液(high flow,500mL/min)を用いて,連日長時間のHDFを施行した。急性肝不全の多くは術後や外傷後または敗血症性の肝・腎不全例であり,PEに先行して新鮮凍結血漿を補充しながら単純HDFを開始した。急性肝不全に対するHDFの保険適応は,月10回で3ヵ月間を限度とされている。自験例の死亡率は劇症肝炎68例で54%,急性肝不全38例で68%であった。劇症肝炎では急性肝炎重症型の時点からALSを開始しており,急性肝不全でも血小板減少時からの早期治療が有用と思われた。

  • 注目されているalarmin,high mobility group box 1 protein(HMGB1)の血液浄化法による除去を例として
    西田 修
    2011 年 2 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    重症敗血症の病因物質であるサイトカインは,分子量が20~30kD程度であり理論的には血液濾過法により濾過あるいは吸着の原理で除去できる。一方,これらを除去する方法として大孔径の血液濾過膜や病因物質の吸着を企図した膜も開発されている。ところが,こと臨床研究となると膜の選択を考慮に入れたデザインは皆無である。湯本らの血液濾過膜によるHMGB1除去の報告によると,AN69STによる吸着能力は極めて高く,膜の化学的,物理的性質とHMGB1分子の相性が良いと考えられた。このような物質を除去する場合,孔径の大きな膜を使用しても,濾過による除去には限界があり,吸着が優れる。一方,海外では吸着は短時間で飽和に達するとの報告もあるが,吸着量,吸着時間は病因物質によっても異なると考えられる。本稿ではHMGB1の除去の検討を例にとり,血液浄化法の原理に基づく病因物質の効率的除去を再考した。

  • 安田 日出夫, 加藤 明彦
    2011 年 2 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    わが国において腎機能代替療法(renal replacement therapy:RRT)を要する急性腎傷害(acute kidney injury:AKI)は10万人あたり13.3人/年で,そのうち1/3は敗血症が関連する。この敗血症性AKIの死亡率はおよそ60%と予後不良で,敗血症性AKIは重要課題である。近年の取り組みとして,バイオマーカーの探索,early goal-directed therapy(EGDT)の実践,RRTの改良とそれぞれの検証が進んできている。敗血症性AKIの病態には腎内血行動態の変化と腎実質性障害が関わっている。腎内血管透過性,酸化ストレス,誘導型一酸化窒素合成酵素を治療ターゲットにして動物実験では腎質性障害と死亡率は軽減される。また,自然免疫の起点となっているToll-like receptor(TLR)のうち,TLR9を制御することによって免疫抑制を回避し敗血症性AKIと死亡率は改善する。

  • 相馬 泉, 服部 元史
    2011 年 2 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    小児領域における持続的血液浄化法の特徴としては低血液流量下での治療であることと体外循環量の循環血液量に対する割合が相対的に多いことがあげられる。そのため回路凝固しやすい環境下での治療であるといえる。本論文では,回路凝固要因の検討と現状の小児用回路の構成を分析したうえで,安全性が担保され,いかに回路凝固を防ぐかという観点での持続的血液浄化法(continuous blood purification therapy:CBP)用血液回路の要件について考察した。その結果いくつかの提案ができる。その内容は,ピローの省略,抗凝固薬注入部位を血液ポンプ前方で脱血部により近い部分に設置,動脈側ドリップチャンバを選択的に省略することがあげられる。

  • 杉山 千里, 宮坂 友美, 永田 明子, 平野 みのり, 原田 大希, 柳沢 政彦, 針井 則一, 森口 武史, 松田 兼一
    2011 年 2 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化法のなかでも持続的血液濾過透析(CHDF)は,重症患者に持続的に行うという点で,看護師の果たす役割は大きい。そこで今回,CHDFの施行に対して,ICUの看護師がどのような思いで望んでいるのか調査した。その結果,肯定的な思いと否定的な思いが聞かれ,それぞれの思いの背景として,各6項目があげられた。CHDFに対する肯定的な思いは,教育・マニュアル作成・情報の共有化・チーム医療の推進といった,医療安全対策が十分なされている事が要因となっていた。一方否定的な思いの要因として,トラブルシューティングに対する苦手意識があり,不安が強い事があげられた。不安を払拭するためには,医療安全対策やチーム医療が実感できるよう,経験豊富な看護師や医師・MEと連携した,ベッドサイド教育の強化が必要である。

原著
  • 池田 寿昭, 池田 一美, 谷内 仁, 須田 慎吾, 平松 真燈佳
    2011 年 2 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    重症敗血症・敗血症性ショック症例に対して行われたPMX-DHPを再評価した。対象は,1994年~2010年の期間で,重症敗血症・敗血症性ショック症例に対しPMX-DHPが施行された301例(生存群201例,死亡例100例)である。28日後転帰別に生存群と死亡群に分け,背景因子(APACHEⅡスコア,SOFAスコア,Goris MOFスコア)および呼吸循環系(P/F,血圧,catecholamine index:CAI),サイトカイン(IL-6,IL-1ra),血管内皮細胞機能関連マーカー(PAI-1),Procalcitoninについて,PMX-DHP施行前後および群間で比較した。結果:背景因子は,Goris MOFスコアでのみ群間に有意差を認めた。呼吸循環系は,両群とも血圧,P/Fは有意に上昇し,CAIは低下した。IL-6,IL-1raは,両群とも,PMX-DHP前後で有意に低下したが,群間に有意差はなかった。PAI-1もPMX-DHP施行前後で両群とも有意に低下した。結語:PMX-DHPにより,重症敗血症・敗血症性ショック症例において呼吸,循環系の改善が確認された。各種炎症性メディエーターはPMX-DHPにより減少したが,転帰との関連は見出せなかった。

  • 阿部 雅紀, 岡田 一義, 丸山 範晃, 伊藤 緑, 奈倉 千苗美, 松本 史郎, 相馬 正義
    2011 年 2 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    目的:これまで,AKIに対する腎代替療法(renal replacement therapy:RRT)で使用されてきた透析液や置換液の中には少量の酢酸が含まれていた。酢酸はサイトカイン産生を亢進し,慢性炎症を惹起するだけでなく,血管拡張作用により循環動態へ悪影響を及ぼすことで懸念されていた。そこで,AKI治療における無酢酸(酢酸フリー)透析液と従来の酢酸含有透析液との臨床効果を比較検討した。方法:対象は2008年5月から2010年7月までに当院入院となり,AKIのためRRTを施行された40例(男性27例,女性13例,平均年齢67.5歳)。酢酸フリー群(Acetate-free group:AF群)20例と酢酸含有群(Acetate-contained group:AC群)20例の2群に分けて比較検討した。治療時間は患者個々の病態に応じ2~6時間とし,透析液流量500mL/minで行った。結果:患者背景で,APACHEⅡスコア,SOFAスコア,慢性腎臓病の併存率等に2群間で有意差は認めなかった。腎機能回復までの期間,入院日数はAF群で有意に短期間であった(p<0.05)。1例あたりの平均治療回数もAF群で有意に低値であった。処置の必要な低血圧の頻度もAF群で有意に低頻度であった。pH,HCO3-濃度は観察期間中,AF群で有意な高値を示した。結論:無酢酸透析液を用いたRRTは酢酸含有透析液のそれに比し,AKI患者の腎機能回復率の改善効果があることが示唆された。

  • 大久保 淳, 高橋 満彦, 眞田 恒文, 飯窪 護, 森口 武史, 松田 兼一
    2011 年 2 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    救急・集中治療領域において持続的血液濾過透析(Continuous hemodiafiltration:CHDF)は中心的な急性血液浄化療法である。しかしその施行にあたり,施行条件は施設間で統一されていないのが現状である。われわれは,山梨CHDF標準化ワーキンググループを立ち上げ,山梨県各施設におけるCHDF施行条件についての実態調査を行い,血液回路の洗浄方法,抗凝固剤使用時の至適活性化全凝固時間(Activated clotting time:ACT)や操作条件等について検討した。血液浄化器および回路の洗浄は添付文書を参考に2,000mL+抗凝固剤添加液500mLと,ACT目標値は脱血側140~200秒と,返血側180~230秒,水分バランスの調節は補充液量で調節するなどを推奨し,現在検証中である。他の施行条件についても議論を尽くしひとつひとつ段階を追えば標準化は十分可能であり,早急な標準化が望まれる。

第21回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 土井 研人, 片桐 大輔, 根岸 康介, 野入 英世, 松原 全宏, 中村 謙介, 矢作 直樹, 藤田 敏郎
    2011 年 2 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    エンドトキシン血症診断に用いられるendotoxin activity assay(EAA)は好中球の反応応答性を利用し,acute kidney injury(AKI)バイオマーカーneutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL)は,腎尿細管上皮細胞のみならず好中球からも放出される。AKIにおいては好中球の活性化が少なからず生じており,これらの新たな診断マーカーがAKIにおけるエンドトキシンショックを検出しうるか検証した。36名の持続血液濾過透析を必要としたAKI症例において,EA値および血漿NGALを測定した。EA値と腎機能低下の程度に相関は認めなかった。グラム陰性桿菌感染症によりエンドトキシンショックを呈した9症例におけるEA値と血漿NGALは有意に高く,EA値と血漿NGALを組み合わせることで,エンドトキシンショック症例を非エンドトキシンショック症例と高い精度で区別することが可能であった。

  • 湯本 美穂, 西田 修, 森山 和広, 下村 泰代, 中村 智之, 栗山 直英, 原 嘉孝, 宮庄 拓, 山田 晋吾
    2011 年 2 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    流血中に出てきたhigh mobility group box 1 protein(HMGB1)は炎症を転移・増幅させる致死的mediatorであり,重症病態の治療ターゲットとして注目されている。そこで国内外で使用可能な血液濾過膜を用いてHMGB1除去の可能性および機序を検討した。Polysulfone:PS(FX,SH),Polymethylmethacrylate:PMMA(CH-N, CH-SX, BG-PQ),Polyacrylonitrile:PAN(AN69ST),Polyarylethersulfone:PAES(High cut-off:HCO)の7種の膜を使用し,牛アルブミン(alb)加サブラットBSG液に精製HMGB1を添加し,trans membrane pressure(TMP),filterの入口,出口,濾液のHMGB1およびalb濃度を測定し,血液,濾液クリアランス(CL)を算出した。濾過膜(PS,PAES)では,HCOが最大の濾液CL(10~12mL/min)を示したが,alb漏出も大きかった。吸着膜では,AN69STで60mL/min,PMMAで約25mL/minと高い血液CLを示した。HMGB1の除去には吸着機序が重要であることが明らかとなった。

原著
  • 川邉 学, 鳴海 敏行, 藤森 隆史, 伊佐 慎太郎, 大島 竜郎, 宮崎 真一, 本多 仁, 山下 芳久, 大浜 和也, 鈴木 洋通
    2011 年 2 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    持続的血液浄化療法(Continuous Blood Purification:CBP)において,脱血-返血間で血液の温度は変化する。そこで,模擬血液37℃,室温27℃の条件でCBP回路の構成部位ごとの温度変化,および,血液流量(Qb),透析液流量(Qd),補充液流量(Qs),加温有無(加温設定温度37℃)の各施行条件における熱の収支を検討した。回路構成部位では,ヘモフィルタ部の熱損失量が大きく,動脈および静脈エアートラップチャンバでの熱損失は認められなかった。設定条件においては血流量が増加するに従い熱損失量も増加した。透析液,補充液の加温を行わない場合,QdまたQsが0.5L/hr増加するごとに約30~50cal/minの増加し,加温ありにおいてはQdまたはQsが0.5L/hr増加するごとに約30cal/min分時熱損失の減少が認められた。

  • 塚本 功, 土屋 陽平, 松田 真太郎, 秋元 照美, 村杉 浩, 山下 芳久, 高根 裕史, 鈴木 洋通
    2011 年 2 巻 1 号 p. 110-117
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    持続的血液浄化療法施行時において急激にhemofilter life-timeが短縮することを時折経験する。そこで各社ポリスルフォン膜hemofilterを用いた際の凝固要因から臨床上効果的な使用法を見出すことを目的にAEF-07(AEF),SH-0.8(SH),D-30NR(D30)を用いた症例の体外循環パラメータおよびhemofilter life-timeが突然24時間未満に短縮した要因を調査した。その結果,動静脈圧較差および膜間圧力差(transmembrane pressure:TMP)はAEF<D30≒SH,hemofilter life-timeはAEF≒SH<D30,さらに膜交換理由は全群で濾過圧減少が少なく,AEFは動脈圧上限,D30は返血圧上限が多かった。またhemofilter life-timeが短縮した際には膜素材変更がlife-timeの有意な延長を認め,同一膜素材変更は効果を認めなかった。各社ポリスルフォン膜hemofilterは施行条件による影響が少ないために仕様を改良することで膜の特徴性を引き出せる可能性が示唆されたが,急激なhemofilter life-time短縮の対応は膜素材の変更が最も効果的であった。

症例報告
  • 小泉 三輝, 瀬田 公一, 金子 惠一, 大野 祥子, 菊地 祐子, 長谷川 千夏, 八幡 兼成, 菅原 照
    2011 年 2 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    症例は78歳男性。下部胆管癌による閉塞性黄疸に対し,endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)を施行。検査後重症急性膵炎を発症。急性腎傷害,急性呼吸不全,代謝性脳症に関して当科紹介。Volume filtrationおよびPMMA膜の吸着性能に期待して,連日3日間sustained low-efficiency dialysis with filtration(SLED-f)を実施。ダイアライザーは東レ社製PMMA膜BG-2.1PQ(2.1m2)を使用し,施行条件は血液流量(QB)100mL/min,透析液流量(QD)300mL/min,濾過流量(QF)1,200mL/h,施行時間6hとした。ERCP後第33病日には血液透析から離脱した。SLED-f前後でinterleukin-6の測定を行ったが,明らかな低下は認められなかった。本法により循環動態に与える影響を最小限にしながら良好な溶質・水分の除去ができ,さらに血液濾過透析間の時間を利用して各種画像検査を施行することが可能であった。

  • 成宮 博理, 高倉 康人, 熱田 晴彦, 井上 衛, 原田 恭一, 井川 理, 出口 雅子
    2011 年 2 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    症例は79歳の男性。直腸癌に対して低位前方切除術が行われた。術後に縫合不全をきたし敗血症および急性腎不全となったため,全身管理を目的にICUに入室した。敗血症による高サイトカイン血症および急性腎不全に対してpolymethyl methacrylate(PMMA)膜を使用した持続血液濾過透析(Continuous hemodiafiltration:CHDF)を開始した。開始直後から血圧が低下し,補液や昇圧剤の増量を行ったが血圧の回復は一時的であった。薬剤アレルギーを疑って抗凝固剤を変更したが,血圧は安定せずCHDFは断念した。翌日に十分な補液と輸血を行い,PMMA-CHDFを再度開始した。しかし末梢血管抵抗の急激な低下と伴に血圧は低下した。開始直後の血液検査では好酸球やIgEの上昇は認めなかったが,単球の上昇が認められた。PMMA膜の使用は断念しpolysulfone(PS)膜によるCHDFを行ったところ,血圧低下はなく順調に経過した。PMMA膜は生体適合性に優れた安全性が高い膜と考えられているが,本症例ではPMMA膜が原因と考えられる血圧低下をきたし,その機序には単球が関与した可能性が示唆される。

  • 井手 岳, 竹田 健太, 西 信一, 高橋 佳子, 竹末 芳生, 猪川 和朗, 森川 則文
    2011 年 2 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    MRSA感染における重症患者では,急性腎障害を発症し持続血液濾過透析(CHDF)を導入されることが少なくない。CHDF施行中に抗MRSA薬を投与する場合,グリコペプチド系薬やアミノグリコシド系薬はTDMを行いながら投与量を調節しなければならないが,オキサゾリジノン系薬のリネゾリド(LZD,ザイボックス)は投与量を調節する必要はないとされている。現在,当院でCHDF施行中でのLZDの血中濃度を調査中であり,半減期が極端に延長した3症例を経験したので今回報告する。3症例のLZDの半減期は13.0時間,11.0時間,11.0時間と延長し,クリアランスも4.2L/h,3.6L/h,4.5L/hと低下していた。また,これらの症例では血小板数の減少傾向も認めた。CHDFを施行している患者ではLZDの血中濃度が予想以上に上昇している可能性もあり,副作用に十分注意する必要がある。

  • 中倉 兵庫, 芦田 明, 白数 明彦, 岸 勘太, 奥村 謙一, 森 保彦, 井上 徹, 玉井 浩
    2011 年 2 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    劇症型心筋炎は非特異的な症状に引き続き,心不全症状が急速に進行し心停止に至る死亡率の高い予後不良な疾患である。今回,われわれは経皮的人工心肺補助(PCPS)に加え,血漿交換(PE),持続血液濾過透析(CHDF)を併用し,後遺症を残さずに救命できた劇症型心筋炎を経験したので報告する。症例は9歳女児で,胃腸炎様症状から全身状態悪化し,入院2日目の心臓超音波検査で心機能の極度な低下を認め直ちにICU入室となった。ICUに入室後,意識混濁を呈し心停止となり蘇生成功後PCPS開始となった。また,肝不全などの多臓器不全,高サイトカイン血症に対してPEとCHDFを併用したところ回復し,後遺症なく入院61日目に退院となった。劇症型心筋炎に対しての治療は循環動態の破綻による臓器障害をいかに回避するかが予後に大きく影響すると考えられる。今回,PCPSに加えて施行したPEおよびCHDFはサイトカイン除去,心不全治療および腎不全治療としての体液管理など,さまざまな病態に対して効果的であったと考えられ,その機能回復までの橋渡し的治療として有用な治療法のひとつであると思われた。

  • 蔀 亮, 後藤 孝治, 大地 嘉史, 安部 隆国, 牧野 剛典, 金ヶ江 政賢, 安田 則久, 山本 俊介, 日高 正剛, 野口 隆之
    2011 年 2 巻 1 号 p. 136-140
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル フリー

    心室補助装置装着患者に生じた急性腎傷害を合併する敗血症性ショックに対してhigh flow-volume continuous hemodiafiltration(CHDF)を施行し,救命できた症例を経験した。症例は62歳男性。急性心筋梗塞後低心拍出量症候群に対して心室補助装置を装着していた。入院中に送血脱血管周囲に感染を生じたため,感染制御目的に開創ドレナージ術を施行後,発熱と急激な全身状態悪化を認め,敗血症性ショックでICUに入室した。Early Goal Directed Therapy(EGDT)に従い治療を行ったが,血行動態の改善は得られなかった。急性腎傷害も合併しており,早期に通常流量の3倍量のhigh flow-volume CHDFを導入したところ,血行動態の改善が得られた。カテコラミン減量が可能となった導入6時間後に通常流量のCHDFに移行したが,血行動態は安定していた。その後も経過は良好で,入室6日目にICUを退室した。EGDTに反応しない急性腎傷害を合併する敗血症性ショックに対して,通常より血液浄化量を増加させたhigh flow-volume CHDFが血行動態の改善に有効である可能性が示唆された。

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