劇症型心筋炎は非特異的な症状に引き続き,心不全症状が急速に進行し心停止に至る死亡率の高い予後不良な疾患である。今回,われわれは経皮的人工心肺補助(PCPS)に加え,血漿交換(PE),持続血液濾過透析(CHDF)を併用し,後遺症を残さずに救命できた劇症型心筋炎を経験したので報告する。症例は9歳女児で,胃腸炎様症状から全身状態悪化し,入院2日目の心臓超音波検査で心機能の極度な低下を認め直ちにICU入室となった。ICUに入室後,意識混濁を呈し心停止となり蘇生成功後PCPS開始となった。また,肝不全などの多臓器不全,高サイトカイン血症に対してPEとCHDFを併用したところ回復し,後遺症なく入院61日目に退院となった。劇症型心筋炎に対しての治療は循環動態の破綻による臓器障害をいかに回避するかが予後に大きく影響すると考えられる。今回,PCPSに加えて施行したPEおよびCHDFはサイトカイン除去,心不全治療および腎不全治療としての体液管理など,さまざまな病態に対して効果的であったと考えられ,その機能回復までの橋渡し的治療として有用な治療法のひとつであると思われた。