2011 年 2 巻 1 号 p. 136-140
心室補助装置装着患者に生じた急性腎傷害を合併する敗血症性ショックに対してhigh flow-volume continuous hemodiafiltration(CHDF)を施行し,救命できた症例を経験した。症例は62歳男性。急性心筋梗塞後低心拍出量症候群に対して心室補助装置を装着していた。入院中に送血脱血管周囲に感染を生じたため,感染制御目的に開創ドレナージ術を施行後,発熱と急激な全身状態悪化を認め,敗血症性ショックでICUに入室した。Early Goal Directed Therapy(EGDT)に従い治療を行ったが,血行動態の改善は得られなかった。急性腎傷害も合併しており,早期に通常流量の3倍量のhigh flow-volume CHDFを導入したところ,血行動態の改善が得られた。カテコラミン減量が可能となった導入6時間後に通常流量のCHDFに移行したが,血行動態は安定していた。その後も経過は良好で,入室6日目にICUを退室した。EGDTに反応しない急性腎傷害を合併する敗血症性ショックに対して,通常より血液浄化量を増加させたhigh flow-volume CHDFが血行動態の改善に有効である可能性が示唆された。