劇症肝不全に対する人工肝補助療法(ALS)として,われわれは血漿交換(PE)に血液濾過透析(HDF)を組み合わせて施行してきた。PEの保険適応は劇症肝炎に対し10回,急性肝不全に対しては7回を限度とされている。劇症肝炎に対してPE単独では昏睡死する症例があるため,昏睡起因物質とされる中分子量物質の除去を目標にHDFを併用した。大量の置換液(high volume,2~3L/h)と透析液(high flow,500mL/min)を用いて,連日長時間のHDFを施行した。急性肝不全の多くは術後や外傷後または敗血症性の肝・腎不全例であり,PEに先行して新鮮凍結血漿を補充しながら単純HDFを開始した。急性肝不全に対するHDFの保険適応は,月10回で3ヵ月間を限度とされている。自験例の死亡率は劇症肝炎68例で54%,急性肝不全38例で68%であった。劇症肝炎では急性肝炎重症型の時点からALSを開始しており,急性肝不全でも血小板減少時からの早期治療が有用と思われた。