2011 年 2 巻 1 号 p. 61-65
わが国において腎機能代替療法(renal replacement therapy:RRT)を要する急性腎傷害(acute kidney injury:AKI)は10万人あたり13.3人/年で,そのうち1/3は敗血症が関連する。この敗血症性AKIの死亡率はおよそ60%と予後不良で,敗血症性AKIは重要課題である。近年の取り組みとして,バイオマーカーの探索,early goal-directed therapy(EGDT)の実践,RRTの改良とそれぞれの検証が進んできている。敗血症性AKIの病態には腎内血行動態の変化と腎実質性障害が関わっている。腎内血管透過性,酸化ストレス,誘導型一酸化窒素合成酵素を治療ターゲットにして動物実験では腎質性障害と死亡率は軽減される。また,自然免疫の起点となっているToll-like receptor(TLR)のうち,TLR9を制御することによって免疫抑制を回避し敗血症性AKIと死亡率は改善する。