2012 年 3 巻 1 号 p. 46-52
維持透析患者では,緊急透析(除水)により改善しない肺水腫症例も存在する。そのような症例の診断・治療の一助とすべく,臨床所見の分析と治療方法の検討を行った。呼吸苦症状にて緊急透析を施行した透析患者の急性肺水腫症例93例を対象に,緊急透析後に呼吸器症状が改善した群(反応群)と症状改善なく人工呼吸器や他の追加治療を要した群(非反応群)に分け,統計分析を行った。全93症例中29例が非反応群であった。非反応群では有意に来院時体温が高く,動脈血酸素分圧は低く,CRPは高値であり,さらに乳酸値が著明に高値であった。非反応群では,PMMA膜による透析とメチルプレドニゾロン投与が奏効し,呼吸器症状と所見が改善した。急性肺水腫を呈する維持透析患者で血中乳酸値1.90mmol/L以上の場合,除水目的の緊急透析による症状改善は期待できず,PMMA膜による透析とメチルプレドニゾロン投与は期待できる治療法である。