日本急性血液浄化学会雑誌
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症例報告
腸管出血性大腸菌O111感染による溶血性尿毒症症候群(HUS)に対し持続的腎機能代替療法(CRRT)を施行して救命した2歳男児の1例
布村 仁亮本山 景一泉 維昌
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2012 年 3 巻 1 号 p. 69-72

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抄録

O111はO157と同じ腸管出血性大腸菌でベロ毒素を産生する。ベロ毒素は血便や腹痛だけでなく,溶血性尿毒症症候群(HUS)および急性脳症を引き起こし,患者が死亡する危険性がある。症例は生来健康な2歳4ヵ月の男児で嘔吐,下痢,血便のため当院へ紹介された。入院後に急性腎障害(AKI)の進行を認めたため,入院翌日より持続的腎機能代替療法(CRRT)を導入した。また,入院当日に痙攣がみられ脳症の発症が疑われたため,CRRTでは脳圧を上昇させない条件設定に配慮した。6日間連続施行後に腎機能の改善を認めたため腹膜透析を導入し,CRRTを離脱した。その後,後遺症を残すことなく退院となった。O111感染はO157と同様に,抵抗力の弱い乳幼児に発症すると重症化する傾向が強い。重症のHUSを呈し,AKIが進行する場合にはCRRTを導入する適応となる。脳症が疑われる場合には脳圧を上げないように条件設定に注意が必要である。

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© 2012, 特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
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