2013 年 4 巻 1 号 p. 63-68
冠動脈バイパス術(CABG)は人工心肺装置を用いない方法(off-pump)により低侵襲化が進んでいる。人工心肺装置を用いた心臓血管手術後の急性腎傷害(AKI)発症および持続的腎機能代替療法(CRRT)導入予測因子に関する報告は多いが,off-pump CABG(OPCABG)に関するものはまだ少ない。そこで,当施設においてOPCABGを施行した非維持透析患者237症例(うち術後CRRTを導入したのは33症例)を対象に,術後のCRRT導入予測因子を検討した。方法はCRRT導入の有無を従属変数,術前・術中・術後の要因を独立変数とし,p<0.05で有意差のあった因子を選択し多重ロジスティック回帰分析により解析した。その結果,術前推算糸球体濾過量:60mL/min/1.73m2未満,術前血清アルブミン値:3.5g/dL未満,術前ヘモグロビン濃度:12g/dL未満,術中尿量:600mL未満,大動脈内バルーンパンピング使用,術後PaO2/FiO2比:300以下が有意であった。結論として,術前推算糸球体濾過量,血清アルブミン値,ヘモグロビン濃度,術中尿量,大動脈内バルーンパンピング使用,術後PaO2/FiO2比を併せることによって術後CRRTの導入を予測しうる可能性が示唆された。