日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
緊張病-外延から内包へ
小林 聡幸
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2010 年 21 巻 1 号 p. 13-20

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抄録
緊張病を一定の病像や経過からなる病型として記述した Kahlbaum に反して,近年の操作的診断基準の緊張病症候群の記述は「緊張病性の特徴」と表されるように緊張病的な「見た目」が重要視されている。確かに緊張病的な「見た目」は様々な疾患で生ずる。緊張病は疾患を横断する非特異的な症状というのはひとつの見解で,緊張病が原始反射に類似しているという Kretschmer の指摘に遡る。換言すると,緊張病とは人間精神の古層の露呈という仮説が成り立つ。また臨床的には緊張病は統合失調症と躁うつ病の蝶番の位置にあるといえる。他方,Kraepelin の早発性痴呆概念自体が,Heckerの破瓜病とともに,Kahlbaum の緊張病の概念を包摂することで成立したことを顧みるならば,緊張病の内包を突き詰めていくと統合失調症の本質に行き着くという考えもある。それは時間性の病理である。
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© 2010 日本生物学的精神医学会
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