抄録
睡眠覚醒にみとめられる概日リズムは内因性の生物時計システムにより制御されている。この生物時計システムは中枢である脳視床下部・視交叉上核のみならず他の組織・器官の細胞にも備わっており,生物時計発振機構には時計遺伝子群が構成する転写・翻訳制御のネットワークが深く関与している。睡眠相前進型,睡眠相後退型,フリーラン(非同調)型などの概日リズム睡眠障害は,生物時計機能の異常や不適応から生じていると考えられている。概日リズム睡眠障害の病態は徐々に明らかにされつつあるが,より精確に理解するためには,患者の生物時計機能障害を正しく評価することが必要である。既存の手法では,深部体温や神経内分泌リズムを数週間にわたって測定する必要があるため,医療現場での普及は進まず,より実用性のある評価法の開発が求められている。現在までに明らかになっている概日リズム睡眠障害の病態と生体組織を利用した時計機能代替測定法について紹介する。