抄録
ニューロモデュレーションの語源は化学シナプス伝達様式における遅いシナプス伝達(神経修飾)に由来する。近年は臨床医学の治療技法としてもこの用語が用いられるが,本稿では生物学的精神科治療学における薬物療法以外のニューロモデュレーションの歴史を振り返り,世界における現在の動向を紹介しながら,将来の展望を探る。精神科医療におけるニューロモデュレーションを,①外因性・高侵襲性,②外因性・低侵襲性,③内因性の3種類に大別して考察した。低侵襲性はけいれん誘発も外科的手技も必要とせず,内因性は外部からの物理的刺激に依存しないことを意味する。それぞれの方法論の長所と短所を理解したうえで治療アルゴリズムの中に適切に配置することが重要である。精神科治療学の負の歴史を忘れずに神経科学と神経倫理を前提としたニューロモデュレーションの精神科臨床応用が重要であろうと思われる。