2013 年 24 巻 1 号 p. 57-61
我々は,アデノ随伴ウイルス(AAV;特にタイプ1もしくは2)由来の組換え体ウイルスベクターを用いてサルの脳内に遺伝子導入を行い,黒質ドーパミンニューロンの変性・脱落を誘導するアルファシヌクレインを強制発現させることにより,新しいパーキンソン病の霊長類モデルを作出した。また,アルファシヌクレインの凝集を低減し,ドーパミンニューロン死を抑制する機能分子であると考えられるパーキン蛋白の遺伝子導入によって,パーキンソン病の発症を防御することに成功した。具体的には,アルファシヌクレインを発現するAAVベクターをサルの黒質に注入することにより作製したパーキンソン病モデルに,パーキン蛋白を発現するAAVベクターの黒質注入を行った。さらに,Cre ─ loxPシステムを利用した神経路選択的遺伝子発現制御法により,黒質線条体ドーパミン神経路に選択的にアルファシヌクレインを強制発現させてパーキンソン病モデルを開発した。