日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
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グリア型グルタミン酸トランスポーター機能障害と精神疾患
田中 光一
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 28 巻 2 号 p. 77-83

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抄録

グルタミン酸は哺乳類の中枢神経系において記憶・学習などの脳高次機能に重要な興奮性神経伝達物質である。しかし,過剰な細胞外グルタミン酸は,グルタミン酸興奮毒性と呼ばれる神経細胞障害作用を持つことが知られている。このため細胞外グルタミン酸濃度は厳密に制御される必要があり,グルタミン酸トランスポーターがその役割を担う。これまで5種類のグルタミン酸トランスポーターサブファミリーが同定されているが,シナプス間隙におけるグルタミン酸の除去は,主にアストロサイトに存在する2種類のグルタミン酸輸送体GLAST,GLT1により担われている。近年,これらグリア型グルタミン酸トランスポーターの変異や発現低下が統合失調症・うつ病などの精神疾患で報告されている。本稿では,GLASTあるいはGLT1欠損マウスが示す異常を概説し,グリア型グルタミン酸トランスポーターの機能障害が関与する精神疾患について考察する。

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© 2017 日本生物学的精神医学会
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