抄録
興奮性神経伝達物質の迅速な再取り込みと再利用は,シナプス伝達の終結や恒常性維持に必須である。小脳の主要なグルタミン酸トランスポーターGLASTはバーグマングリア選択的に発現し,直下に集積するセプチン,CDC42EP4,ミオシン-10など細胞骨格成分と相互作用する。CDC42EP4欠損マウスではGLAST-セプチン間相互作用とGLASTの傍シナプス局在が減弱し,グルタミン酸クリアランス予備能が低下する。運動障害は軽度であるが,低用量GLAST阻害剤の負荷で顕著に増悪する。すなわち,上記の細胞膜裏打ち成分がGLASTをシナプス近傍に集積させる足場ないし拡散障壁として,グルタミン酸の緩衝および再取り込みの効率化に寄与することが推測される。統合失調症の一部で報告されているグルタミン酸トランスポーターの遺伝子変異や発現異常,死後脳でのCDC42EP4やセプチンの量的異常は,上記と類似したメカニズムで病態に関与する可能性がある。