日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
統合失調症におけるアポトーシスと抗精神病薬
倉知 正佳近藤 隆
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2017 年 28 巻 4 号 p. 164-168

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抄録
統合失調症では,前頭皮質,側頭皮質などの体積減少が認められ,これらの変化は未治療患者でも認められている。このような脳灰白質の体積減少をもたらす組織学的変化として,錐体細胞樹状突起棘の減少などがあり,その機序として,アポトーシスの関与という考えがある。現行の抗精神病薬には,アポトーシス促進作用と抗アポトーシス作用という2面性があり,clozapineの重篤な副作用の無顆粒球症は,顆粒球のアポトーシスに基づくことが示されている。他方,clozapineには,5-HT1A作動薬作用を介する神経保護作用,抗酸化作用や抗アポトーシス作用もある。われわれの検討結果では,とくに,olanzapineとclozapineは,抗酸化作用と抗アポトーシス作用を示した。このような非定型抗精神病薬の神経保護作用は,統合失調症の脳の組織学的変化を改善し得る治療薬の探索/開発への手がかりを提供していると思われる。
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© 2017 日本生物学的精神医学会
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