日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
自閉症基礎研究を加速させる新技術とその展望
野村 淳内匠 透
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 31 巻 2 号 p. 71-75

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抄録
社会性行動の障害をコアドメインとする『自閉スペクトラム症(自閉症)』は,コア症状に付随する表現型が多岐に及ぶ神経発達障害である。名称に含まれる『スペクトラム』とは,境界が曖昧でありかつ連続体という意味であり,自閉症疾患表現型の多彩さ,複雑さを意味している。既に複数のヒト死後脳,モデル動物脳を用いた解析から自閉症に共通して変動する遺伝子,パスウェイ,ネットワークの同定が進んでいるが,これら臓器レベルの解析結果は多数の細胞種の影響を受けやすく,マイナーな細胞種の表現型はマスクされる傾向にある。これを解決したのが次世代シークエンスを用いた一細胞RNAシークエンス(scRNA‐seq)である。本技術は,一細胞レベルの解析を可能にしたことで,マイナーな細胞群での転写産物解析のみならず,メジャーな細胞も発現様式に応じて細かく分類し,解析を行う事が可能となった。本稿ではscRNA‐seqを用いた最新の研究結果の紹介,そして本技術を用いた自閉症研究の展望を行う。
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© 2020 日本生物学的精神医学会
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