抄録
近年の自閉スペクトラム症研究では,特有の酸化ストレス所見,あるいはその変化を示唆する生体中のエネルギー代謝所見が提示され,臨床応用が検討されてきた。これまでの研究成果によれば,酸化ストレス所見には自閉スペクトラム症の診療標的としての可能性がある。筆者のグループでも,臨床研究法に基づき,ミトコンドリアの機能を高めるアミノ酸の効果を確認する臨床試験を進めているが,自閉スペクトラム症の表現型の神経基盤はいまだ不明であり,酸化ストレスやミトコンドリア機能と自閉スペクトラム症の関連を問うアプローチでメカニズムの解明を目指す試みは,まだ緒に就いたばかりである。自閉スペクトラム症と酸化ストレスの関連を問う介入研究は,今後の自閉スペクトラム症の解明や診療手段開発において,ますます重要な位置を占めるものと推測される。