日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
32 巻, 3 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 鈴木 道雄
    2021 年 32 巻 3 号 p. 113-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 中川西 修
    2021 年 32 巻 3 号 p. 114-119
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の発症原因解明,予防や治療法の確立の手段の一つはヒトに類似した動物モデルを作製し,解析することである。ヒト疾患のモデル動物確立の際,3つの条件(妥当性)を満たす必要がある。①表面妥当性,②構成概念妥当性,③予測妥当性によって評価される。本研究では発症までの時間軸を取り入れた簡便な統合失調症モデルマウスの作製が急務であると考え,妊娠期のマウスに神経新生抑制薬であるメチルアゾキシメタノール酢酸(MAM)を投与し,出生した雄性マウスの行動解析および神経化学的検討を行った。胎生期MAM曝露マウスは,陽性症状様の運動亢進,陰性症状様の社会性低下,短期記憶・感覚情報処理の障害を惹起させた。これらの行動障害は,56日齢以降に顕著であり,統合失調症が思春期以降に発症することと一致していた。前頭前皮質におけるドパミン神経系の変化,海馬錐体細胞の形態的変化が認められた。胎生期MAM曝露マウスの行動障害は定型抗精神病薬では運動過多以外は改善されず,非定型抗精神病薬ではすべての障害が改善された。以上のように,胎生期MAM曝露マウスは,ヒト疾患のモデル動物確立の際,3つの条件(妥当性)を満たし,胎生期MAM曝露“ラット”よりも優れた統合失調症のモデル動物に成り得る可能性を提唱した。
  • 村上 由希, 今村 行雄, 酒井 大輔, 小西 行郎
    2021 年 32 巻 3 号 p. 120-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    妊娠期の母体ストレス,炎症,栄養状態は自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)を含めた神経発達障害のリスク因子である。特にげっ歯類では炎症を誘導する母体免疫賦活化モデル(maternal immune activation:MIA)を用いて,ASD病態分子の解明が研究されている。細菌感染やウイルス感染を模したMIAモデルでは,toll‐like receptor ligandであるLPSやpoly(I:C)投与が汎用されてきたが,免疫原性のばらつきが多く報告されている。本稿では,母体炎症研究から明らかにされたASDの新たな病態基盤について紹介しつつ,poly(I:C)投与によるMIAモデルの問題点について触れる。さらに筆者らがMIAモデルとして用いている炎症性サイトカインの恒常的発現モデルの有用性について紹介する。
  • 野田 幸裕, 肥田 裕丈
    2021 年 32 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    精神疾患の発症には,神経細胞や神経回路網の発達障害が関与する神経発達障害仮説が提唱されている。環境的要因の曝露により種々の炎症性メディエーターが誘導されるが,プロスタグランジンE2(PGE2)を標的とした神経発達異常や精神疾患の病態との関連性は明らかにされていない。神経発達障害仮説に基づき,精神疾患の発症要因におけるPGE2の役割について検討した。新生仔期マウスに環境的要因として,ウイルス感染,低酸素,あるいは隔離飼育を曝露すると,共通的に脳内PGE2の発現量が増加した。新生仔期マウスにウイルス感染として,polyriboinosinic‐polycytidylic acid(Poly I:C)やPGE2を投与すると,成体期において精神行動異常が認められ,PGE2‐EP1拮抗薬によって緩解された。精神疾患の環境的要因におけるPGE2の役割を明らかにすることで,従来の向精神薬とは作用機序が異なる分子を標的とした新しい予防および治療薬の開発につながる。
  • 毛利 彰宏, 新島 萌, 國澤 和生, 齋藤 邦明, 鍋島 俊隆
    2021 年 32 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症は幻覚や妄想,意欲の低下,認知障害などを主訴とする精神疾患である。多くの患者では抗精神病薬に対する治療抵抗性を有することから新しい作用機序をもつ予防・治療薬の開発が急務となっている。統合失調症の発症・病態仮説には,炎症による神経発達障害仮説やグルタミン酸仮説などが提唱されている。キヌレニン代謝経路は炎症により活性化され,その代謝産物には神経毒性,およびグルタミン酸神経機能に影響を与えるものがある。本稿では,母親が妊娠期にインフルエンザに感染すると胎児に統合失調症に対する発症脆弱性が形成されるという疫学仮説に基づき,作成したウイルスRNA様の作用を示す合成二本鎖RNAポリイノシン‐ポリシチジン(poly I:C)を胎生期に曝露させた統合失調症様モデル動物についての概説とこのモデル動物におけるキヌレニン代謝経路の関与について紹介する。
  • 土屋 賢治
    2021 年 32 巻 3 号 p. 135-140
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    産後の抑うつ(postpartum depression:PPD)を呈する女性から生まれた児のコミュニケーション機能を阻害するという知見がある。そこで,PPDが児の①1歳2カ月における前言語性コミュニケーション機能(ジェスチャ機能・模倣機能),②1〜3歳における言語性コミュニケーション機能(表出言語機能)との関連を,浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)のデータから検討した。その結果,産後1〜3カ月における母親のPPDが,児の1歳2カ月における前言語コミュニケーション機能および1歳6カ月〜3歳における言語性コミュニケーション機能の発達遅延をもたらすことが示された。関連は,母乳哺育の有無,世帯年収,母親の教育歴など,養育行動や環境に影響を及ぼす共変量を調整しても統計学的に有意なままであった。この知見は,母親のPPDと児のメンタルヘルスとの関連を理解するうえで重要な手掛かりとなりうる。
  • 村田 唯, 藤飯 慎也, 岩本 和也
    2021 年 32 巻 3 号 p. 141-143
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症などの主要な精神疾患の発症には,遺伝と環境の相互作用が重要であると考えられているが,そのメカニズムは不明である。脳神経系には特異的な体細胞変異が存在しており,その変異パターンや頻度が精神神経疾患の病態に影響すると考えられている。近年,統合失調症患者死後脳組織や動物モデルにおいてレトロトランスポゾンLINE‐1のコピー数が増大していることが示された。本稿では,LINE‐1の転移メカニズムと母体免疫活性化動物モデルにおけるLINE‐1転移機構の解析について紹介する。
  • 前川 素子, 和田 唯奈
    2021 年 32 巻 3 号 p. 144-148
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
    統合失調症の発症メカニズムについては,脳の発達期におけるさまざまな侵襲が発症脆弱性形成の基盤になる「神経発達障害仮説」が知られている。筆者らは特に,「妊娠中の母親が飢餓にさらされると,子どもの将来の統合失調症発症率が約2倍に高まる」という大規模疫学事象に着目し,脳発達期の栄養欠乏が成長後の統合失調症発症リスクに影響する可能性について解析を進めてきた。筆者らが,脳発達期栄養欠乏を模倣するモデルマウスを作製して解析したところ,脳発達期栄養欠乏マウスは,統合失調症様の表現型を示すこと,その上流には多価不飽和脂肪酸をリガンドとする核内受容体RXRα,PPARαが働いている可能性を見いだした。さらに,ヒトおよびマウスを対象に解析を行い,核内受容体PPARαの機能不全が統合失調症の発症リスクに関わる可能性,核内受容体PPARαが統合失調症の新しい治療ターゲットになる可能性を見いだした。
  • 澤田 知世
    2021 年 32 巻 3 号 p. 149-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
  • 池本 桂子
    2021 年 32 巻 3 号 p. 151-154
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル オープンアクセス
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