抄録
妊娠期の母体ストレス,炎症,栄養状態は自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)を含めた神経発達障害のリスク因子である。特にげっ歯類では炎症を誘導する母体免疫賦活化モデル(maternal immune activation:MIA)を用いて,ASD病態分子の解明が研究されている。細菌感染やウイルス感染を模したMIAモデルでは,toll‐like receptor ligandであるLPSやpoly(I:C)投与が汎用されてきたが,免疫原性のばらつきが多く報告されている。本稿では,母体炎症研究から明らかにされたASDの新たな病態基盤について紹介しつつ,poly(I:C)投与によるMIAモデルの問題点について触れる。さらに筆者らがMIAモデルとして用いている炎症性サイトカインの恒常的発現モデルの有用性について紹介する。