日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
発達早期のライフステージイベントとしての母親の産後抑うつと,その影響を受けた児のコミュニケーション機能の発達
土屋 賢治
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 32 巻 3 号 p. 135-140

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抄録
産後の抑うつ(postpartum depression:PPD)を呈する女性から生まれた児のコミュニケーション機能を阻害するという知見がある。そこで,PPDが児の①1歳2カ月における前言語性コミュニケーション機能(ジェスチャ機能・模倣機能),②1〜3歳における言語性コミュニケーション機能(表出言語機能)との関連を,浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)のデータから検討した。その結果,産後1〜3カ月における母親のPPDが,児の1歳2カ月における前言語コミュニケーション機能および1歳6カ月〜3歳における言語性コミュニケーション機能の発達遅延をもたらすことが示された。関連は,母乳哺育の有無,世帯年収,母親の教育歴など,養育行動や環境に影響を及ぼす共変量を調整しても統計学的に有意なままであった。この知見は,母親のPPDと児のメンタルヘルスとの関連を理解するうえで重要な手掛かりとなりうる。
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© 2021 日本生物学的精神医学会
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