日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
mTORシグナル経路を中心とした自閉スペクトラム症の病態解明と治療法開発に向けて
古田島(村上) 浩子佐藤 敦志池田 和隆
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 33 巻 2 号 p. 58-62

詳細
抄録

自閉スペクトラム症(以下,自閉症)は,対人相互関係やコミュニケーションの障害,繰り返し行動や限局的な興味を主な特徴とする神経発達障害である。患者をサポートするには,自閉症の特性への理解や対応スキルが必要であり,家族やサポートする周囲の人々においても対応が困難な疾患である。自閉症の発症は遺伝や環境要因,また双方の要因の交絡が関与すると考えられているが,現在のところ自閉症の病態解明や根治的な治療法の開発はされていない。本稿では自閉症を併発する遺伝性疾患の病態の一つであるmammalian/mechanistic target of rapamycin(mTOR)シグナル経路の亢進に焦点をあて,基礎研究,臨床研究,さらに臨床や教育現場において患者に実施されている療育について紹介し,議論する。合わせて著者らの研究室において見いだされた基礎研究の成果も紹介し,今後の自閉症研究の展望も述べる。

著者関連情報
© 2022 日本生物学的精神医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top