日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
ケースレポート
異型を伴わない子宮内膜増殖症に対する鍼治療の一症例
井畑 真太朗山口 智村橋 昌樹
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2023 年 48 巻 2 号 p. 123-125

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抄録
【背景】産婦人科診療ガイドライン 2020 では、子宮内膜増殖症はプロゲステロンにより拮抗されない過剰なエストロゲン刺激によって生じる非腫瘍性の変化であり、細胞異型を伴わない子宮内膜腺の過剰増進と定義されている。今回、子宮内膜増殖症により半年間不正出血が続いた患者に 鍼治療を行い、良好な結果が認められたので報告する。
【症例】52 歳女性、主訴 : 不正出血
現病歴 : X 年 4 月より連日不正出血が出現。近医産婦人科を受診、経膣超音波検査を行い、子宮内膜肥厚を認めたため、子宮内膜全面掻爬を施行。組織学的には異型が認められず、子宮内膜増殖症と診断され経過観察となった。しかし再度連日不正出血が出現、X 年 8 月に再度子宮内膜全面掻爬を施行したが、異常は認められず、漢方薬が処方され経過観察。その後も連日不正出血が続き、 X 年 10 月 8 日鍼治療を希望され、当科受診となった。既往歴 : 多嚢胞性卵巣症候群 服薬 : 芎帰調 血飲、芎帰膠艾湯。
【所見】身長 153cm、体重 62kg、BMI 26.5、血圧 139/85mm Hg、脈拍 77 回 / 分 ( 整 )。神経学的所見 は正常、筋緊張は腰腸肋筋、腹証は小腹急結、小腹不仁。鍼治療方針は不正出血の改善を目的に、腎兪、志室、大腸兪、次髎、中髎、三陰交に長さ 40mm、直径 0.16mm単回使用鍼を用い 10 分間置鍼 を週 1 回継続。
【経過】初診の鍼治療後 1 週間は不正出血の量が増加し、連日不正出血が続いた。治療開始 2 週間後より不正出血の回数が週 3 日と改善が認められ、1 ヶ月後には不正出血の回数が週 1 日、2 ヶ月 後より通常の月経周期となった。
【考察】鍼治療は抗ミュラー管ホルモン、卵巣刺激ホルモンの不均衡を調節させ、テストステロン、アンドロゲンを減少させる。そのため本症例においても子宮内膜の正常化に寄与した可能性がある。
【結語】子宮内膜増殖症に対する鍼治療は、症状の改善に寄与する可能性が示唆された。
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