日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
うつ病の病態基盤を標的としたrTMSニューロモジュレーションのこれまでとこれから
野田 賀大
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 33 巻 2 号 p. 71-76

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抄録

うつ病の病態生理の1つに神経可塑性仮説があるが,rTMS療法はまさに脳内ネットワークの神経可塑性を神経修飾することで治療効果を発揮する物理学的な治療法である。これまでの先行研究からは,rTMSの治療メカニズムには,分子レベルではGABA,NMDA,AMPA,BDNFなどが関与していることが示唆されており,神経画像レベルでは安静時機能的MRI計測によるDLPFCと膝下部前帯状皮質の機能的結合性,デフォルトモード・ネットワークやセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク内の機能的結合性の強さ,左DLPFCと線条体間の機能的結合性の強さなどが関与しているとされ,神経化学的にはMRS計測による背側前帯状皮質におけるGABA濃度の変化などが関与していると言われている。本稿では,うつ病に対するrTMS療法の神経生物学的な治療メカニズムに関して,筆者がこれまでに行ってきたTMS研究の知見も交え,rTMS療法が今後めざすべき方向性や展望について考察する。

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© 2022 日本生物学的精神医学会
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