抄録
深層学習や機械学習などの情報技術の発展が目覚ましく,精神疾患にかかわる脳画像研究においてもその有効性が示されつつある。例えば,安静時に撮像した機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:安静時fMRI)データに教師有学習を適用した生物学的基盤に基づいた精神疾患の判別や,教師無学習を適用した精神疾患のサブタイピングなどが行われている。しかしながら,安静時脳活動と行動指標の関係に関する効果量が小さい,脳画像データの施設間差,DSM診断に基づく技術開発などの問題があった。本稿では,これらの問題点および脳画像研究により精神疾患はどこまでわかってきているのか,そして今何をやるべきなのかについて,筆者らが取り組んできた大規模多施設多疾患データセットの構築,脳画像データにおける施設間差を調和するharmonization技術の開発,脳回路に基づく精神疾患のサブタイプ調査に関する取り組みを紹介し,精神疾患における脳画像研究の現状と課題,解決策について概説する。