本研究の目的は,準限界集落という地方集落に居住する高齢者の生活満足度を指標としたQOLに焦点をあて,それに関連する身体的,社会的,心理的な要因を用いて構造的モデルを検討することであった。愛媛県西宇和郡A町B地区に居住する65歳以上の高齢者に対して悉皆調査を行い,304名を分析の対象とした。前期高齢者は144名,後期高齢者は160名であった。多母集団分析を用いてパス図の検討を行った結果,前期高齢者と後期高齢ともに,主観的健康度が社会的なライフスタイルと他者との関係を介して,生活満足度を高めるとともに孤独感を低めていた。また,生活満足度と孤独感には負の関係が見られた。さらに,前期高齢者では主観的健康度が心理的なライフスタイルを介して生活満足度を高めていたが,後期高齢者では,主観的健康度が心理的なライフスタイルと他者との関係を介して,生活満足度を高めていた。本研究の結果から,準限界集落に居住する高齢者が生活満足度を向上させるためには,主観的健康度を高め,社会的な活動を行い,他者との交流をもつこと,心理的に前向きになること,及び孤独感を低減させることが重要であることが明らかになった。特に後期高齢者においては,他者との交流を実感することが必要であると示唆された。