2022 年 27 巻 p. 39-49
本研究の目的は独居認知症高齢者の在宅生活継続を困難とする生活上の課題を明らかにすることである。独居認知症高齢者に対するケアマネジメントを調査時点もしくは1年以内に経験している居宅の介護支援専門員9 名を対象にインタビュー調査を行った。調査時期は2019年2月~3月である。11事例の逐語録の分析を通して在宅生活継続を困難とする生活上の課題を検討した。 独居認知症高齢者の在宅生活継続を困難とする生活上の課題として,【生命の安全を脅かしうる危機】【セルフマネジメント能力の低下】【日常生活のほころび】【必要なサービスの直前キャンセルや拒否】【十分に頼れない家族との関係】【脆弱な近隣・友人との関係】が抽出された。独居認知症高齢者の在宅生活継続を困難とする生活上の課題として,認知機能の低下に関連する内容が多くみられた。それとともに,家族や近隣といった本人を取り囲む環境面が本人の在宅生活の継続の困難さに影響を与えている状況も明らかとなった。今後は,本調査結果を踏まえて独居認知症高齢者の在宅継続を困難とする要因の構造理解に向けた指標開発といった量的調査の実施を進めていきたい。