抄録
私が精神科病院に勤務した新人看護師の頃に認知症の人と初めて出会い,激しい行動・心理症状への対応やケアに, 毎日が戦いにも似た日々だった。認知症の患者様のケアの経験から,「認知症の人と言葉でなくても通じ合うことができる」,「看護師(介護士)の対応によって問題とされる行動を緩和・予防することができる」ことを学んできた。また,安全を保障し,基本的欲求を充足し,理解・受容する看護の原則に則ったケアは,認知症の患者様と関係性を築き,行動・心理症状を予防する対応でもあったと考えられる。私が大学の看護学科の教員になった2007年にBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia( BPSD)を知り,今まで臨床で実践していたケアは中核症状に配慮しながら心理的要因や環境的要因に介入していた,というように臨床で得てきた私の経験知にエビデンスが加わったのだ。そこから,私のBPSDの非薬物的介入に関する研究が始まった。