抄録
地域における高齢者の意思決定支援に関し,実際の事例を通じて得た学びについて考察した。病院内での支援が比較的明確なプロトコールに基づき行われるのに対し,地域では高齢者の日常生活全般に関わる支援が求められ,柔軟かつ包括的な対応が必要とされる。また,信頼関係の構築は意思決定支援において不可欠であり,支援者の共感が関係構築の鍵となる。成年後見制度の適用など,適切な支援のタイミングの見極めが重要である。さらに,地域住民の理解と協力が不可欠であり,地域全体で高齢者を支える風土の構築が必要である。以上の点から,地域における高齢者の意思決定支援は,高齢者の意向を尊重しつつ,継続的に関わりを持ち,地域と連携して支援を進めることが重要であることを指摘した。